前置き
前置き — この教材の歩き方
この章のねらい
- この教材の守備範囲と読み方を知る
- インタラクティブデモの操作方法を確認する
やらない夫、大変だお。実験データを解析しろって言われたんだけど、「とりあえずFFTかけてスペクトル見て」って言われて、FFTが何の略かもわからないお…
Fast Fourier Transform、高速フーリエ変換だ。……という名前だけ教えても、お前の顔を見る限り何も解決してないな。
大学の数学でフーリエ何とかってのをやった気はするんだお。でも単位を取った瞬間に脳から消去したお。
正直なやつだな。じゃあ最初からやろう。フーリエ級数から始めて、フーリエ変換、サンプリング、そしてディジタルフィルタの設計まで。信号処理の「背骨」を一本通すコースだ。
この教材の位置づけ
ちなみにこれ、どのくらい難しい話なんだお? やる夫は微分積分と複素数くらいなら、かろうじて覚えてるお。
それだけあれば十分だ。想定しているのはこんな読者だな。
- 大学の教養数学(微積分・複素数・ベクトル)を一応は通過した
- これから信号処理を使う必要がある、または単位のために学んでいる
- 教科書の数式の羅列を見ると目が滑る
逆に、厳密な数学的証明は範囲外だ。積分と総和の交換みたいな細かい話は「実用上は大丈夫」で流すところもある。そこをちゃんとやりたくなったら、それは数学の教科書の出番だ。
「目が滑る」、まさにやる夫のことだお。
だからこの教材には仕掛けが2つある。1つ目はこの対話形式。お前が詰まりそうなところで、お前が先に詰まってくれる。
それ、やる夫がバカの見本ってことかお!
読者代表と言え。2つ目の仕掛けが、各章に埋め込んであるインタラクティブデモだ。黒いパネルにスライダーが付いたやつだな。数式で「項数を増やすと元の波形に近づく」と書かれても実感が湧かないだろうが、自分の手でスライダーを動かして波形がうねうね変わるのを見れば、一発で腑に落ちる。
数式との付き合い方
でも数式は出てくるんだお? 正直に言うお。
出てくる。隠しても仕方ないからな。例えばこの教材で最初のボスはこいつだ。
うわっ、出たお! まだ前置きだお!?
落ち着け。今は読めなくていい。言いたいのは、この教材の数式は全部「式の前後に、その式が何をしたいのかの会話が付いている」ということだ。式単体で殴られることはない。安心して第1章に進め。
その言葉、信じるお。
各章の構成
全体の地図を渡しておこう。大きく4部構成だ。
第1部: フーリエ解析の基礎(第1〜3章) — 信号を正弦波に分解するという発想を、フーリエ級数 → 複素指数関数 → フーリエ変換の順に拡張していく。すべての土台だ。
第2部: 離散の世界へ(第4〜6章) — コンピュータで扱える「離散時間信号」を導入して、離散時間フーリエ変換(DTFT)、離散フーリエ変換(DFT)、そしてFFTまで到達する。お前が最初に言ってた「とりあえずFFT」の中身がここでわかる。
第3部: フーリエ変換の性質とサンプリング(第7〜11章) — 時間シフト・変調・たたみこみ・パーセバルの等式という道具を揃えてから、本丸のサンプリング定理とスペクトル解析に挑む。
第4部: ディジタルフィルタ(第12〜16章) — ノイズを落とす、特定の周波数を取り出す、という実用の話。ラプラス変換と z 変換を経由して、フィルタの解析と設計までやる。
けっこう長旅だお…。途中で寝てもいいかお?
各章は独立に読み返せるよう作ってあるから、寝たら起きてから続きを読め。目次の章カードには読了チェックも付く。
元ネタについて
最後に大事な話だ。この教材は、鏡 慎吾先生(東北大学)が公開されていた教材「やる夫で学ぶディジタル信号処理」の章構成を参考にして、本文・図・デモをすべて新しく書き起こした非公式の独立教材だ。
つまり、本家があるってことかお。
そうだ。本家は対話形式で信号処理を教える試みの先駆けで、学会講演にもなった名教材だ。現在はインターネットアーカイブで読める。この教材で物足りなくなったら、ぜひ本家も読んでくれ。リンクはページ下部のフッタに常に置いてある。
よし、じゃあ行くお! まずはフーリエ級数だお!
その意気だ。常識的に考えて、最初の一歩はそのテンションで踏み出すのがいい。
- 対象読者は「教養数学は通過したが、信号処理は初めて」の人
- 各章のデモはスライダーで操作できる。数式を目で確かめるのがこの教材の主旨
- 全16章+付録2章。第1部から順に読むのが基本だが、各章は読み返しもしやすい構成
- 本教材は鏡慎吾先生の「やる夫で学ぶディジタル信号処理」の章構成を参考にした非公式の新規教材